分散協調システム
システムの概要
なぜ分散協調システムとして農業情報システムを開発する必要があるのでしょうか
農業における意思決定は下の例のように,
・ さまざまなデータを組み合わせて行う
・ 同種のデータがさまざまな目的に共通的に利用する
という特徴があります.
意志決定例 |
気象データ |
作物データ |
土壌データ |
地形データ |
品種選択 |
○ |
○ |
○ |
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水害管理 |
○ |
○ |
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○ |
土地利用 |
○ |
○ |
○ |
○ |
病害防除 |
○ |
○ |
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○ |
灌漑 |
○ |
○ |
○ |
○ |
・ そのようなさまざまなデータは,普通,小規模で地域性が高く,しかもデータの管理・所有が,普及所,防除所,農協,大学,民間,試験場等に分散し,必要な全てのデータの一元管理することは不可能です
・ そのため,これまでは必要なデータを毎度毎度別々の組織から入手しなくてはならず,効率的な意志決定の大きな妨げとなってきました.
この問題を解決するのが分散協調システムです.
・ 分散協調システムでは多様なデータをばらばら分散したまま,所有機関の独自の管理を尊重しつつ,ネットワーク上であたかも一元管理されているように連携し共有できるシステムです
・ 最近では分散協調システムをグリッドとよぶこともあります
下の図は分散協調システムの概略図です
このシステムでは,
¨ ひとつデータベースが複数の目的に共通的に利用される
¨ ひとつのプログラムが,それぞれの地域特有のデータベースと組み合わされて多くの利用者に共有される
¨ プログラムを開発する毎に必要なデータベースを用意する必要がない
¨ データベースやプログラムをシステムの部品のように追加することで,システム全体の機能の拡張ができる
¨ 内容の同じデータベースやプログラムは,普通ひとつなので,管理更新が用意で,利用者はいつも最新のものが利用できる
¨ はじめから巨大システムを設計管理するわけでないので,開発コストと維持管理コストは相対的に低い
¨
といった特徴があります.
つまり,ひとつひとつのプログラムやデータベースはそれぞれ単独で機能を発揮する一方,自由に組み合わせることで新たな機能も容易に実現できるということになります
たとえば,圃場の病害虫を判定し,その対策を知り必要な農薬情報を得ることができる「病害虫防除支援システム」を考えてみましょう.下図のように,病害虫の種類を知るための「病害虫図鑑データベース」,防除方法知るための「病害虫防除指針データベース」,防除に使う農薬の情報を得る「農薬情報データベース」が必要であると仮定します.
これでのシステム構築ではこの3種類のデータベースを1箇所に集めて管理しました.しかし分散協調システムでは,「病害虫図鑑データベース」は大学,「病害虫防除指針データベース」は防除所,「農薬情報データベース」は業界団体や国といった別々の組織が管理運用し,利用者が必要であると仮定します.
そして,「病害虫防除支援システム」は利用者の要求に応じてそれぞれのデータベースから情報を得るわけです.これによりそれぞれのデータベースはいつでも最新情報に保たれ,時には単独に利用されることもできます.
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